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“スマートグリッド” は、ボールダーから

スマートグリッド(Smart Grid)とは
出典:NHK/eco-channel

地球環境問題への世界的な関心の高まりを背景に、太陽光発電、風力発電等の再生可能エネルギーの利用拡大が見込まれる中、これらを安定的に供給し、情報通信技術も取り入れて、より効果的・効率的な系統を可能とする「スマートグリッド(次世代送電網)」に世界的な注目が集まっています。

地球温暖化対策の重要性が強く意識され、太陽光発電など自然エネルギーへの期待は高まるばかりです。「スマートグリッド」に関連したプロジェクトも世界中で一斉に進みつつあります。

スマート・グリッドは「賢い(スマート)」な「電力網(グリッド)」を意味する言葉で、電力網にIT技術を導入して電気機器などに関する情報の通信や制御を行い、電力の利用を最適化しようという考え方で、電力の需要と供給をITによって効率的に調整する次世代の送配電網のことです。

「スマートグリッド」の生みの親

自動車のバッテリーが重要な役割を果たすこの画期的な電力システム、そのコンセプトは、アメリカの著名なエネルギー学者のエイモリー・ロビンス (Amory Lovins)が、1991年に考案したものです。エイモリー・ロビンスは、環境問題のシンクタンク、ロッキーマウンテン研究所の創設者です。

効果的なエネルギー使用、多様で再生できるエネルギー源と「ソフトエネルギー経路」、自然エネルギーを重視した新しい社会のコンセプトを、30年前から提唱し、各国政府の政策アドバイザーや、有名企業の環境コンサルタントを歴任しています。

エイモリー・ロビンス氏   Photo : RMI.org

アメリカで消費される石油のほとんどがクルマの燃料に使われています。クルマの省エネを進めるために、ロッキーマウンテン研究所は郵便物の集配車に着目し、研究所はベンチャー企業を立ち上げ、そこで集配車用のプラグインハイブリッド車の開発にも取り組んでいます。

また、ロビンス氏は、アメリカで最も多くの石油を消費する組織である米軍の、省エネへの取り組みについて、国防総省と共同で、石油の消費量を減らす研究を行いました。そこで発表された報告書でロビンス氏は、2040年代までに石油から脱却できるとし、その理由が純粋に経済的な利益からであるがゆえに、理念や政治的な立場を越えて、省エネという考え方は幅広い合意が得られると強調します。

2009年に、Time誌は、ロビンス氏を「世界で最も影響力のある人物100人“TIME 100” The World’s Most Influential People」の1人に指名しています。

電力の一方向供給しかできなかった従来のメーターを取り外し、「スマート・メーター」と呼ばれるデジタルコミュニケーションシステムを設置することで、電力会社と一般利用者間の電力双方向供給が可能になります。

スマートグリッドは新時代における企業や国民生活の変化を映し出す「次世代の鏡」として、新たな〝街づくり〟の有力なツール。それがスマートグリッドです。

ボールダーが 「スマートグリッド・シティ」に

全米初のスマートグリッド・シティは、コロラド州に電力を供給する電力会社エクセル・エナジー社が、全米8つの州からテスト区域として選んだのは人口10万人弱というコロラド州ボールダー。

新テクノロジーを受入れられるだけの教養を備えた地域住民の質(地域人口の70%が大卒以上の学歴を有している)、コロラド大学ならびに米国標準技術局などの連邦政府機関がいくつか存在するアカデミックな土壌。

ロビンス氏のロッキーマウンテン研究所も2004年にボールダー事務所をオープン。グリーンビルディングに改装し、2009年には、LEEDのプラチナ認証(グリーンビルディングの最も高い格付け)を取得している。

20092月、オバマ政権の米国のグリーン・ニューディール政策の柱として打ち出したことから、一躍注目を浴びることとなったスマートグリッド。
スマートグリッド化を進めることによるメリットとしては、下記の4点が挙げられる。

  1. ピークシフト(昼間電力消費の一部を夜間電力に移行させる方法)による電力設備の有効活用と需要家の省エネ
  2. 再生可能エネルギーの導入
  3. エコカーのインフラ整備
  4. 停電対策
スマートグリッド 日本での取り組み

スマートグリッドの標準化については米国、欧州、中国などが標準化に向けた取り組みを進めている。
例えば、米国は2010年1月にスマート・グリッドに関する標準化ロードマップである「NISTスマートグリッドの相互運用性に関する規格のフレームワーク及びロードマップ案(第1版)」を公開した。第1版では、早急に策定する必要のある25の規格と、今後検討が必要な50の規格を特定している。

日本では2013年ごろから実用化に向け、小規模な電力網で実証実験が行われている。
世界規模で市場が見込まれるスマートグリッドを核としたスマートコミュニティ関連市場に、日本企業が積極的に参画できるよう、また、官民連携によるスマートコミュニティの実現に向けた、共通の課題に取り組むための実務母体としてNEDOが「スマートコミュニティ・アライアンス」を設立している。

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